2024年の競輪は元日から始まりますが、グレードレースは「東日本発祥倉茂記念杯2024(大宮競輪G3)」が”始まりの地”となります。2024年1月5日(金)から1月8日(月・祝)まで、まずは大宮が緒戦の地となるのです。
新たな1年の始まりは、すなわち級班の入れ替わりが起きる時。しかも、新年ともなれば、「赤パン」ことS級S班の9名もまた交替のときです。
関東地区、そして埼玉支部の偉大な男として、平原康多選手は常にS級S班であり、「赤パン」の代名詞でもありました。10年連続で「SS」であった平原選手が、本当に久しぶりに「黒パン」で迎える大宮記念。その見どころやシリーズ展望、何より車券での戦い方について、存分に見ていくことにいたしましょう。
- 東日本発祥倉茂記念杯とは何か?その詳細や近年の結果について総合的に解説
- 平原康多こそ関東の誇り!「一度も終わっていない」こそ競輪の精神
- 大宮バンクのG3競走に限定したデータ!周長500mの差し有利は本当か?本当なんです
目次
「東日本発祥倉茂記念杯2024(大宮競輪G3)」の詳細情報
開催年 | 優勝選手 | 所属支部 |
---|---|---|
2019年 | 神山 拓弥 | 栃木 |
2020年 | 平原 康多 | 埼玉 |
2021年 | 平原 康多 | 埼玉 |
2022年 | 平原 康多 | 埼玉 |
2023年 | 深谷 知広 | 静岡 |
「東日本発祥倉茂記念杯」は、大宮競輪場の開設を祝う記念競輪です。立川競輪場の「鳳凰賞典レース」ともども、地元地区である関東勢が非常に強いレースとして知られています。
あるいは、それは「武田豊樹」や「平原康多」といった絶対なる存在によって引き継がれてきた、平成から令和の今までの至強の系譜とも表現できるでしょう。
当サイトでも、2021年の「東日本発祥倉茂記念杯」の特集記事などにおいて、競輪史で重要な意味を持つこのレースの由来を解説してきました。「倉茂武」さんの業績は名選手たちと同様に、時を越えて語り継がれていくのです。
<前回決勝回顧>「東日本発祥倉茂記念杯2023(大宮競輪G3)」は深谷知広が郡司浩平の番手から抜け出して勝利!
車番 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
1 | 平原 康多 | 埼玉 |
2 | 郡司 浩平 | 神奈川 |
3 | 佐藤 慎太郎 | 福島 |
4 | 宿口 陽一 | 埼玉 |
5 | 中本 匠栄 | 熊本 |
6 | 萩原 孝之 | 静岡 |
7 | 新山 響平 | 青森 |
8 | 吉田 有希 | 茨城 |
9 | 深谷 知広 | 静岡 |
2023年1月に開催された「東日本発祥倉茂記念杯2023(大宮競輪G3)」。本命視されていたのは、やはり地元埼玉の平原康多選手でした。関東ラインは先頭に茨城の21歳、新進気鋭の吉田有希選手を配し、2番手を平原康多選手、3番手も自在に立ち回れる同県後輩の宿口陽一選手と盤石の構え。
とはいえ、対抗格の南関東ラインも強力であり、S級S班の郡司浩平選手が先頭を務め、2番手に静岡所属が定着した深谷知広選手、3番手に同じ静岡の45歳である萩原孝之選手でした。
また、北日本ラインも新山響平選手と佐藤慎太郎選手のSSコンビで、単騎となった熊本の中本匠栄選手も”曲者”感が漂う存在とあって、「平原が立川記念に続いて、大宮記念でも負けるかもしれない」というほのかな予感が漂っていたのです。
それはまさしく、「2023年の”勢い”」を暗に示唆する結末だったのかもしれません。いつもは先頭でラインに尽くす深谷知広選手が、珍しい番手回りからの完璧な競輪でした。郡司浩平選手の意気に応え、文句なしの記念制覇です。
1着、深谷知広選手。2着、中本匠栄選手、3着、佐藤慎太郎選手。単騎も交えた別線決着によって、3連単9-5-3は134番人気で45,610円というビッグな万車券でした。それだけ、関東ラインへの「願い」にも似た期待と人気が集まっていた面が垣間見えます。
銀輪ギャンブラー真里谷のシリーズ展開予想&注目選手紹介
「東日本発祥倉茂記念杯2024(大宮競輪G3)」においても、中心となるのは地元の関東勢でしょう。近年の結果を見ても、その強さは歴然。後段でも解説するとおり、大宮バンクは周長500mに加えて独特なカントを有していることから、ここで走る機会の多い同地区選手が有利にシリーズを戦えます。
ただし、今回は2024年の新生S級S班が5名も集結しました。地元関東の眞杉匠選手はもちろん以下の項目で優勝候補として取り上げますが、南関東の深谷知広選手、近畿の脇本雄太選手に加え、中国からは松浦悠士選手と清水裕友選手が到来。年明けから壮絶な戦いが繰り広げられることになるでしょう。
- 平原康多(埼玉):競輪選手の宿命との戦い……地元記念から逆襲へ!
- 眞杉匠(栃木):たどり着いたトップ9の高み!栃木の24歳がつくる新時代
- 深谷知広(静岡):S級S班への帰還!「静岡の深谷」として初めての赤パンで連覇に挑む
そのうえで、注目したい選手としては上記の3名をチョイスしました。地元関東の2名に、昨年の優勝者である南関東の深谷選手。ラインとしての戦い、そして地区ごとの総合力を加味して考えると、こうした選び方になるのではないでしょうか。各項目で紹介していきます。
シリーズ注目選手①/平原康多(埼玉):競輪選手の宿命との戦い……地元記念から逆襲へ!
何よりも、本人がつらいでしょう。埼玉の平原康多選手は、なんでもできて、とてつもなく強い。これぞ関東を代表するトップレーサーであるとともに、衰え知らずの力でもって数多のビッグタイトルで活躍してきたのです。
ですが、2023年はなんと優勝ゼロ。特別競輪の優勝は「寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント2021(弥彦競輪G1)」から遠ざかり、開催優勝自体も「ふるさとカップ2022(弥彦競輪G3)」での完全Vが最後となっています。
2024年。10年間守ってきたS級S班の座を明け渡し、久しぶりにS級1班でのシーズンを迎える平原康多選手。それでも、「今年は、こういう巡り合わせ。ケガを克服できない1年だったということ。また来年頑張ればいい」と前を向く姿は、決して心までは折れていないことを示しています。
競輪選手にとって避けられぬ宿命、それは「ケガ」と「老い」に他なりません。ですが、佐藤慎太郎選手や神山雄一郎選手といった偉大なレジェンドがいる限り、それらが決して言い訳にならぬことは、同じく現役の名選手なればこそ強く感じているでしょう。
平原選手にとって、逆襲の2024年となるかどうか。この東日本発祥倉茂記念杯には、「東日本を背負う男の新生劇」という大テーマも鎮座しています。
シリーズ注目選手②/眞杉匠(栃木):たどり着いたトップ9の高み!栃木の24歳がつくる新時代
何たる目覚ましい活躍でしょうか。ニューヒーローの誕生というものは、かくも劇的にやってくるものなのかと、適切な比喩を探すのに惑ってしまいます。2023年、岐阜の山口拳矢選手が競輪ダービーこと「日本選手権競輪2023(平塚競輪G1)」で優勝しましたが、勝るとも劣らない鮮烈な輝きを放った若手選手こそが栃木の眞杉匠選手です。
眞杉匠選手は、山口拳矢選手よりさらに3歳も若い24歳。1999年2月1日の生まれですので、年明けからまもなく25歳の誕生日がやってきます。まだまだ可能性に満ちあふれた存在です。
にもかかわらず、2023年の活躍はもはや”ヤベェ”と唸ってしまうものでした。「オールスター競輪2023(西武園競輪G1)」と「朝日新聞社杯競輪祭2023(小倉競輪G1)」、G1競走の年間両獲りを果たしたのですから、これを見事と言わない手はありません。
もちろん、西武園オールスターは茨城の吉田拓矢選手が失格になるほどの献身的な仕掛けがあったからこそ、G1競走初優勝へつながった面もあるでしょう。ただ、その機会に乾坤一擲の走りができることは、やはり実力がなければいけません。
これを証明するのが、2023年11月、グランプリへの切符をめぐる戦いである競輪祭です。
このお祭りにあっても見事に決勝進出を成し遂げた眞杉選手でしたが、なんと関東勢は1人だけ。結果として、単騎を選択することになりました。単騎の競走はラインに気を使う必要こそありませんが、援護はほとんど期待できませんし、道中の立ち回りの技術がとりわけ重要になってきます。
そうして訪れた決勝のレース本番。次の項目で紹介する深谷選手が3車ラインの利を活かして果敢に飛ばすなか、眞杉選手はその後ろとなる4番手の位置を確保しました。そこへ福井の脇本雄太選手が後方から仕掛けるものの、かかりきった深谷選手を捉えきれずに失速していきます。
さあ、こうなると南関東ライン2番手の松井宏佑選手が盤石の抜け出し、悲願のG1優勝か……と思われたところで、これを目標にした眞杉選手が見事に差し切ったのです。
「眞杉は、強い」
「きっと、年末も。そして、来年も」
そうした想いを抱いているならば、なおさら今回の「東日本発祥倉茂記念杯2024(大宮競輪G3)」は見届けましょう。心躍らせてくれる競輪は、人生にとって何よりの”福”なのですから。
シリーズ注目選手③/深谷知広(静岡):S級S班への帰還!「静岡の深谷」として初めての赤パンで連覇に挑む
ついに、深谷知広選手がS級S班へと戻ってきました。史上最速かつ無敗でのS級特別昇級、さらにG1タイトルまで史上最速制覇といったレコードを残してきた深谷選手。愛知支部所属として、師匠の金子貴志選手の渾身の走りを引き出し、「最強の師弟コンビ」とまで呼ばれました。
そうして、「KEIRINグランプリ2013(立川競輪GP)」でもこの絶対的なラインが威力を発揮し、金子選手は悲願のグランプリ制覇を達成。師弟がともに涙を流し、競輪史に刻まれる1ページとなったのです。
そんな深谷知広選手が、地区をまたいで静岡支部に移籍したのが2021年1月1日付けのこと。よって、2024年は初めて「静岡の深谷知広」として、赤パンで戦うことになります。
かつて玄人の競輪ファンでさえも唸った先行力が戻ってきたからには、どれほどのドラマを生んでくれることでしょう。期待は果てしなく広がります。昨年も関東地区勢を撃破してこのシリーズを制し、連覇の権利を唯一有しています。新年の大宮バンクが、「帰ってきた深谷知広、S級S班お披露目興行」の舞台となるやもしれません。
大宮競輪場のバンクの特徴
決まり手 | 1着率 | 2着率 |
---|---|---|
逃げ | 8.3% | 10.3% |
まくり | 27.6% | 19.0% |
差し | 62.4% | 36.3% |
マーク | – | 31.8% |
周長500m、みなし直線66.7m。その数字に違わず、「大宮は自力選手にはめちゃめちゃつらいバンク」です。この事実を何よりも雄弁に語るのが、上記のデータでしょう。
こちらは、「2014年から2023年まで、大宮のG3開催(S級9車立て)」に限ったデータです。ただでさえ番手以降の選手が強くなりやすい記念競輪。「差し選手の1着率62.4%・2着率36.3%」という数字には、そうした傾向がもろに出ています。
さらに、当サイトが以前より公開している記事もご覧ください。こちらで解説しているとおり、大宮はバンクの傾斜であるカントまでもが差し追込選手に有利に働くのです。
大宮で”逃げ逃げ決着”や”まくりまくり決着”といった「自力型のみの台頭」が起きるとすれば、A級の各競走がメインとなるでしょう。記念競輪の今回は、やはり番手選手を中心として考えつつ、「こうしたデータを覆し得る選手は誰か」を考えることが大切です。
「東日本発祥倉茂記念杯2024(大宮競輪G3)」イベント情報
大宮競輪場が首都圏に位置しているということもありますが、なんといっても2024年のグレードレース開幕を担う開催です。これまでは立川の「鳳凰賞典レース」がその役目を担うことが多かったものの、今年は大宮がその栄誉に浴することとなったため、イベント内容も非常に充実したものとなりました。
まずは4日間開催の前半。1月5日(金)と1月6日(土)のイベント情報を見てみましょう。
日付 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
1月5日 | トークライブ | 村上義弘 |
1月5日 | トークライブ | 新山響平 |
1月5日 | ミュージックライブ | いいもんズ |
1月5日 | CS解説者予想会 | 山口幸二、村上義弘 |
1月5日 | 大宮競輪解説者予想会 | 久保千代志、吉井秀仁 |
1月6日 | トークライブ | 犬伏湧也 |
1月6日 | ダンスパフォーマンス | 大宮高校ダンス部 OKDC 22nd&23rd |
1月6日 | CS解説者予想会 | 内林久徳、村上義弘 |
1月6日 | 第4回埼玉県高等学校選抜ケイリン 大宮記念杯 |
同日に出場選手紹介・発走・表彰式 |
1月6日 | 大宮競輪解説者予想会 | 久保千代志、吉井秀仁 |
なんと現役選手にして、2024年もS級S班の赤パンを履くことになった新山響平選手がトークライブに登場です。また、地場の大宮高校ダンス部の華やかなパフォーマンスに加え、未来を担う高校生選手による選抜ケイリンなど、「年始開催ならでは」の内容が並びます。
1月7日の日曜日、さらに最終日となる1月8日の成人の日も、まことに濃厚な内容がそろいました。開催の楽しみが大いに増すラインナップです。
日付 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
1月7日 | お笑いライブ | アイデンティティ |
1月7日 | トークライブ | 飯田風音 |
1月7日 | BEAUTY TALK LIVE | 近藤みやび |
1月7日 | CS解説者予想会 | 山口幸二、吉岡稔真 |
1月7日 | 大宮競輪解説者予想会 | 小池和博、山口健治 |
1月8日 | お笑いライブ | ダブルネーム |
1月8日 | ダンスパフォーマンス | ジェクサー大宮 土曜日ジュニアダンスチーム |
1月8日 | 選手会チャリティオークション | 白岩支部長 |
1月8日 | お笑いライブ | どりあんず |
1月8日 | CS解説者予想会 | 内林久徳、吉岡稔真 |
1月8日 | 大宮競輪解説者予想会 | 小池和博、山口健治 |
1月5日-8日 | そのほか毎日開催イベント多数 | スピードくじ配布、未確定車券抽選会 縁日コーナー、サイクルタイムトライアル コバトン・さいたまっち・昇竜くん・さい☆ボーグらマスコット出迎え等 |
「東日本発祥倉茂記念杯2024(大宮競輪G3)」まとめ
2023年の競輪を締めくくる「KEIRINグランプリ2023(立川競輪GP)」。それから2日後には新年がやってきて、三が日が終われば2024年競輪のグレードレースが始まります。今年の記念競輪の開幕は大宮から。75周年とキリの良い開催となりました。
S級S班に返り咲いた選手、S級S班からついに降格した選手。年の移り変わりひとつで、大きく明暗が分かれることを、ファンもまた改めて思い知ることになるでしょう。
大宮バンクの特徴は、非常に明快です。周長500mのロングバンクが、紛れもない差し有利の傾向を示している点も、当記事では紹介しました。
ただし、高配当というものは「そうした確率が”崩れるとき”」を狙うのが常道でもあります。ぜひとも、当記事のみならず、当サイトの提供する車券に対する考え方、何よりとてつもない”知恵”を提供する「優良おすすめサイト」の力を借りること。その判断によって、”一年の計”を定めることになるやもしれません。
大宮競輪場のアクセス
大宮競輪場。その正式名称は実に硬質であり、「大宮公園陸上競技場兼双輪場」というものです。当初の計画は1940年東京五輪の会場のひとつとして計画されたものであり、”戦争と平和”を感じさせる歴史的事実から、「大宮バンクの歩み」は始まっていると言えるでしょう。
戦後復興の要として「競輪」が始まったとき、大宮もまた新たな戦いの舞台としての門出を迎えました。1949年、元号にして昭和24年1月14日のことです。
「競輪発祥の地」が小倉であるのに対し、「東日本における競輪発祥の地」たる大宮が迎える75周年。さらにあと四半世紀を積み重ね、100年の節目を迎えることを願う戦いが、2024年の戦いの始まりを告げます。
住所 | 埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4丁目15-1 |
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電話番号 | 048-641-1002 |
最寄り駅 | 東武野田線「大宮公園駅」 ※徒歩 約5分 JR・東武・埼玉新都市交通「大宮駅」 ※無料送迎バス 約20分 1. 西口から徒歩5分 2. ミルキーウェイバス停②番 (新生銀行フィナンシャルセンター前) |
最寄りIC | 首都高速埼玉新都心線「新都心西IC」 ※県道35号線 約10分 |
無料駐車場 | 無 |
公式サイト | 大宮競輪場 |