日本の競輪を基にした自転車トラックレースと言えば「ケイリン」ですが、そんなケイリンにはUCIトラック国際大会やオリンピック出場を目的とするプロチームが存在します。
それが「トレードチーム」です。
普段から公営競技の競輪しか遊んだことがない方からすると、聞き慣れない言葉かもしれませんが、自転車競技という大きな括りで考えると非常に優秀な選手が多く集まっています。
そこで、当記事ではケイリンにおけるトレードチームとはなにか?を解説していきます。
また、2020年のネイションズカップ(旧ワールドカップ)はトレードチームが参加できなくなってしまい、今後どうなってしまうのかも注目されているので、参加できなくなってしまった際に考えられる懸念点も考えていきましょう。
目次
トレードチームとは?
ケイリンにおけるトレードチームとは、プロチームが所属するチームとして「プロチーム」とも呼ばれていましたが、現在はプロ・アマの区別がなくなり、総称して「トレードチーム」と呼ばれています。
このトレードチームはUCIに登録されており、UCIトラック国際大会への参加を目的として3名~10名の選手とスタッフ1名から形成されています。
また、トレードチームによっては選手に対して給料がでるチームもあり、出るチームを「プロ」ないチームを「アマチュア」として分けているのです。
トレードチーム参加可能種目
トレードチームが出場できる種目は「ケイリン」だけでなく、スプリント・1kmタイムトライアル・500mタイムトライアル・チームスプリント・個人パシュート・ポイントレース・スクラッチ・マディソン・チームパシュートなど様々な種目があります。
ただし、トレードチームは世界選手権などに出場できない特徴も持っています。
トレードチームの存在意義は?
なぜトレードチームと呼ばれるプロが所属するチームがあるのかというと、その一番の理由はワードカップへの出場できる可能性が広がるからです。
基本的に、それぞれの国の代表に選ばれる人数には限りがあります。
そのため、ワールドカップへ出られる実力が十分にあったとしても先行に漏れてしまい、ワールドカップへ出場できなくなる可能性がでてきてしまいます。
また、自転車競技に力を入れていない国であれば、そもそも出場する機会すらなく、実力を世界に発信していきたいのにできないという選手が出てきてしまうでしょう。
その理由があって、トレードチームはワールドカップへ出られるはずだった実力の高い選手が先行から漏れてしまった場合に受け皿として大きな役割を担っています。
トレードチームの種類
UCIトレードチームには、「UCIワールドチーム」「UCIプロフェッショナルコンチネンタルチーム」「コンチネンタルチーム」などのレベルごとの区分け以外にも、競技連盟が母体となる「ナショナルチーム」、スポンサーが付いている「プロチーム」、地域やクラブチームの選手が資金を集める「アマチュアチーム」などの種類があります。
これらのチームの種類がどのようなものなのか一つ一つ見ていきましょう。
UCIワールドチーム
UCIワールドチームはトレードチームの中でも最高峰のカテゴリです。
UCIワールドツアーへの出場ができるだけではなく、出場義務も課せられています。
また、コンチネンタルサーキットHCやクラス1のレースにも出場可能となっていますが、出場してもポイントが付かないという特徴があります。
UCIプロチーム
UCIプロチームは、トレードチームの中でも上から二番目に格付けされているチームです。
2019年までは、UCIプロフェッショナルコンチネンタルチームという名称という名称で、日本では「プロコンチネンタルチーム」「プロコン(チ)」とも呼ばれていましたが、2020年からはUCIプロチームとして名称が変更となりました。
コンチネンタルチーム
コンチネンタルチームはトレードチームの中では3番目に位置づけられているチームです。
主にプロとアマチュアが混ざるチーム編成となっており、出身国の連盟から認可を受ける必要があります。
コンチネンタルチームとプロチームとの違いは、選手数8人以上16人以下と小規模で編成でき、選手はプロに限定していない、UCIプロツアーに参加できないなどの特徴もあります。
ナショナルチーム
ナショナルチームは競技連盟が母体となっているトレードチームですが、脇本雄太選手などが所属していた「JPC(Japan Professional Cyclist Association)」が有名です。
主に東京オリンピックへの出場に向けてUCIポイント獲得のために活動しています。
アマチュアチーム
アマチュアチームは地域のクラブチームの選手や友人同士などで資金を集めて結成されたトレードチームです。
その中でも有名なアマチュアチームが「HUUB Wattbike Test Team」です。
「HUUB Wattbike Test Team」は、外生ローンやクラウドファンディングを駆使しして資金を集めてUCIレースに出場しました。
アマチュアと言っても、パシュートなどで優勝した実力を持っており、アマチュアチームの中でも最高峰のチームと言っても良いかもしれません。
トレードチームが除外されたUCIネイションズカップ
2019年6月20日にワールドカップがUCIネイションズカップへ名称変更、開催時期の変更など大きな改変が行われました。
細かい部分でもいくつかの変更点がありましたが、何よりも話題に挙がっているのはネイションズカップ(旧ワールドカップ)への参加にトレードチームが除外されるという点です。
しかし、なぜトレードチームを除外したのかという明確な意図がUCIから発表されておらず、もちろん「BEAT Cycling Club」、「HUUB Wattbike」などのトレードチームはこの変更に不満を持ちました。
そして、トレードチームがネイションズカップ(旧ワールドカップ)へ出場できないとなると、ケイリン選手や今後のトレードチームへ悪影響が出ること間違いないでしょう。
そこで、今回の改変によって起こりうる可能性についてお話していきます。
強豪選手が出場できなくなる可能性がある
「BEAT Cycling Club」、「HUUB Wattbike」などのトレードチームは世界選手権への出場のためにポイント獲得をしていましたが、そのポイント獲得に非常に重要な大会へトレードチームが出場できなくなってしまいました。
特に短距離競技で強いと有名なオランダの「BEAT Cycling Club」は、この状況になってしまうと出場機会さえ奪われてしまう可能性があります。
また、イギリスの「HUUB Wattbike」も同様に出場機会が減ってしまうかもしれません。
スポンサーが減ってしまいチームの存続に危機
イギリスをベースとする「HUUB Wattbike」にはアメリカの個人パシュート世界記録保持者アシュトン・ランビー選手が所属しています。
昨年は金メダルを獲得しており、まさに強豪チームと呼べるトレードチームです。
しかし、ネイションズカップ(旧ワールドカップ)へトレードチームが参加できなくなると、もちろん「HUUB Wattbike」も参加することができません。
このような強豪チームに所属する選手らが大きな大会への出場機会を失ってしまうとスポンサーアピールの場も減ってしまい、チーム存続のための資金も不足してしまうでしょう。
トレードチームには世界で通用するような才能を持つ選手が数多くいるので、今後の将来性も考え、はなからネイションズカップ(旧ワールドカップ)への参加を諦め、ロードレースのみに集中する判断になるかもしれません。
ケイリン全体のレベルが低下してしまう
ネイションズカップ(旧ワールドカップ)への参加を考えていた日本のトレードチームにも大きな影響を与えてきます。
昨年のネイションズカップ(旧ワールドカップ)には「dream SEEKER」、「JPC」、「TEAM BRIDGESTONE CYCLING」が参加しており、日本のナショナルチームでも功績を残してきた選手で構成されており、ケイリンの実力を上げるためにハイレベルなレースを行うネイションズカップ(旧ワールドカップ)へエントリーをしてきました。
しかし、ネイションズカップ(旧ワールドカップ)への参加ができなくなってしまうと、ハイレベルなレースに参加する機会が減ってしまい、同時にUCIポイントの獲得や実戦経験を得るチャンスがなくなってしまうでしょう。
やはり、国際大会ともなるハイレベルなレースで得られる実務経験は非常に大きな物なので、ネイションズカップ(旧ワールドカップ)に出場できないとなると日本のケイリン全体のレベル低下も懸念されてしまいます。
開催時期変更による懸念点
ネイションズカップ(旧ワールドカップ)の開催時期の変更によっても発生する問題点が考えられます。
それは、中距離種目への影響です。
基本的にトラック競技は、ロードレースが行われるシーズンとは違う冬季に行われていたため、中距離種目の選手も両方に参加することができていました。
しかし、冬季に行われていたネイションズカップ(旧ワールドカップ)が7月~9月の夏季に変更となってしまったため、両方に出場するのは現実的に難しくなってしまいました。
そのため、中距離選手の多くはトラックレースとロードレースのどちらに出場するのかを決めなければなりません。
ワールドツアー選手のオリベイラ兄弟もどちらを選んでいくのか気になるところです。
まとめ
以上、当記事ではケイリンにおけるトレードチームについて紹介しました。
トレードチームとは、UCIトラック国際大会への参加を目的として3名~10名の選手とスタッフ1名から形成されているチームです。
そして、このトレードチームはワールドカップへの出場できる可能性を広げる受け皿としての大きな役割を持っています。
しかし、ワールドカップへの出場の受け皿としてトレードチームでしたが、次のネイションズカップ(旧ワールドカップ)からはトレードチームが除外されるという大きなルールの改変が行われてしまいました。
そのため、トレードチームの存在意義も減ってしまうので「BEAT Cycling Club」、「HUUB Wattbike」などのトレードチームはこの改変をUCIに異議申し立てをしています。
今後、トレードチームが参加できるようになるかは定かではありませんが、トレードチームが参加できるか否かは今後の日本のケイリン界にも大きく関わってくるのでUCIの動きに注目していきましょう。