アスリートは常に自分との戦いを続けながら、毎年のように台頭する新勢力との戦いを繰り広げます。今年の「寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント2023(弥彦競輪G1)」もまた、それにふさわしい舞台が弥彦競輪場に整いました。
PRポスターには「おやひこさまの光に導かれて」から始まる、熱いキャッチコピーが光ります。この荘重な触れ込みは、弥彦競輪場のある弥彦村に由緒正しき彌彦神社が存在しているため。
万葉の歴史が見つめる弥彦村において、まさしく「神々の見守る戦い」が始まることになります。
- これまでの寛仁親王牌はどんな結果?近年の結果のおさらいと「今年の異変」を知ろう
- 競輪にも「新時代」の波が来る!激走に期待したい”ひとつなぎの若手選手”を紹介
- 弥彦バンクは同じ寛仁親王牌の開催地である前橋と大きく違う!車券回収率を上げる過去記事も提案します
目次
寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント2023(弥彦競輪G1)の詳細情報
開催年(開催地) | 優勝選手 | 所属支部 |
2018年(前橋) | 脇本 雄太 | 福井 |
2019年(前橋) | 村上 博幸 | 京都 |
2020年(前橋) | 脇本 雄太 | 福井 |
2021年(弥彦) | 平原 康多 | 埼玉 |
2022年(前橋) | 新田 祐大 | 福島 |
過去5回の「寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」は、上記のような結果でした。前橋開催が4回、弥彦開催が1回という内訳。今年(2023年)に加え、来年(2024年)も弥彦での開催が予定されているため、その点でもまた車券を予想する要素になりそうです。
重要な情報があります。近年の活躍が目立つ脇本雄太選手は、8月の「オールスター競輪2023(西武園競輪G1)」に落車し、右肋骨骨折と肺気胸で全治1ヶ月の怪我を負いました。このため、ギリギリまで出走の可否を保留していましたが、ついに欠場を決断。S級S班からは8名、賞金ランキング上位は9名が出走する運びとなりました。
「新山響平」「守澤太志」「佐藤慎太郎」「新田祐大」「平原康多」「郡司浩平」「古性優作」「松浦悠士」と、敬称略の名前だけでもゾクリと楽しい震えがくる8名。特に、今年のS級S班を象徴する北日本地区の充実具合ですが、決して盤石とは言い切れないコンディション具合あり、十分にジャイアントキリングがありうるG1競走の怖さもありといったところ。
2023年の寛仁親王牌は、勢力図がぐるりと入れ替わる展開が待っているかもしれません。それはまた11月の「朝日新聞社杯競輪祭2023(小倉競輪G1)」、そして年末の「KEIRINグランプリ2023(立川競輪GP)」へ向けて、勝負を告げる打鐘が鳴らされることも意味しているのです。
銀輪ギャンブラー真里谷のシリーズ展開予想
開催直前に、心配かつ無念の情報が入ってきました。福井の脇本雄太選手に続き、広島の町田太我選手の欠場が発表されたのです。先日の「ちぎり賞争奪戦2023(豊橋競輪G3)」で記念競輪初制覇(G3競走は2度目)を達成しただけに、本人も悔しいことでしょう。
逆に言えば、繰り上がりでの出場が決まった佐藤友和選手にとっては大きなチャンスです。ぜひとも、悔いのない走りをしてほしいもの。G1という大舞台は賞金も当然に大きな魅力ですが、まずもって出場できることが大きな誉れなのですから。
- 眞杉匠がオールスター競輪に続くG1タイトルを狙う!関東勢の要となりうる活躍に期待
- 太田海也は世界で結果を残した超新星!オールスター競輪に続く大フィーバーを目指せ
- 嘉永泰斗が熊本競輪場の復活に華を添える!満足行く走りで故郷に吉報を持ち帰ることができるか
S級S班についても、脇本雄太選手以外の8名は勢ぞろいしています。優勝候補という立場でいえば、ここから選ぶべきでしょう。
しかし、今回の寛仁親王牌は「競輪の未来」を感じさせる好メンバーがそろいました。それは20代の中盤の若武者たちに代表される、ニューウェイブとも言うべき存在に代表されています。とりわけ注目したい3人の選手についてピックアップし、もって「シリーズ全体の展開を左右する存在」と申し上げることにいたしましょう。
シリーズ展開予想①/眞杉匠がオールスター競輪に続くG1タイトルを狙う!関東勢の要となりうる活躍に期待
2023年8月、西武園競輪場で行われた「オールスター競輪2023(西武園競輪G1)」は、地元地区である関東勢が4車ラインを結成。すでにG1タイトル持ちの吉田拓矢選手が志願して先頭に立ち、2番手には栃木の眞杉匠選手、3番手に関東の総大将たる埼玉の平原康多選手、4番手に同じく埼玉の武藤龍生選手という並びで、必ずやG1タイトルを関東で獲るという意志に満ちあふれていました。
対するは徳島の犬伏湧也選手と愛媛の松本貴治選手から成る四国ライン、山口の清水裕友選手と佐賀の山田庸平選手から成る西日本ライン、そして最大の実力者ながらも単騎となった大阪の古性優作選手です。
「競輪とは、ラインで戦う競技である。一丸となったラインの戦いは、強敵さえも凌ぐ力を発揮する」
そうした競輪ならではの魅力を実感させる結末として、24歳の眞杉匠選手が2番手から発進して優勝。吉田拓矢選手がペナルティをもらうレベルでの、すなわち今なお物議を醸している「早すぎる死に駆け」を敢行したのに応え、オールスター競輪を制してG1ウィナーとなりました。
さしもの古性優作選手といえど、これは捉えられずに3車身差の2着。ルールのあることで、かつ「競輪道」という”人情”のある世界ですから、議論の的になるのは避けられません。それでも、眞杉選手は実力でもって決勝まで勝ち上がり、ついに関東4車の有利を活かしきったのもまた事実なのです。
そうした背景からのG1連勝を狙う眞杉匠選手ですが、今回は彼自身が誰かを引っ張る役目になる可能性も濃厚です。特に、決勝まで勝ち上がった場合は、関東の誰かを来季のS級S班に、ひいては年末の「KEIRINグランプリ2023(立川競輪GP)」へ連れて行くような戦いを選択する可能性も高いでしょう。
とはいえ、まずは勝ち上がらないことには、誰かを勝たせるもへったくれもありません。「鳳凰賞典レース2023(立川競輪G3)」では関東5車の先頭に立ってその役目を果たしましたが、何といっても今回はG1競走。高い決勝進出の壁を突破する必要があります。
ただ、眞杉選手ならば、この大舞台で再び輝かしい走りを見せてくれる。今やそのマークが厳しくなろうとも。ファンがこう思うほどに人気選手となったからには、ぜひとも勝ち上がってもらわねばなりません。それがスター選手の宿命なのです。
当サイトでは、直近でも「三山王冠争奪戦2023(前橋競輪G3)」で、眞杉匠選手には注目しておりました。まさか同月にオールスター競輪を制するとは思いませんでしたが、眞杉選手のポテンシャルはまだまだ「無限の可能性」を秘めていると言えるでしょう。今節もその走りを見届けたい存在です。
シリーズ展開予想②/太田海也は世界で結果を残した超新星!オールスター競輪に続く大フィーバーを目指せ
岡山の太田海也選手の快走は、さながら「黒船来航」のような心地で受け止めた競輪ファンの方も多いかもしれません。121期の24歳は、もとより自転車競技を主戦場としていましたが、いよいよその実力が開花しつつあります。
最近でも、ナショナルチームでの世界レベルのトレーニングによって、その競走能力に磨きが掛かる例はいくつも見られます。今回は残念ながら欠場となった脇本雄太選手もそうですし、昨年グランドスラムを達成した新田祐大選手もそうでしょう。
2023年現在、日本代表で最も期待されている選手と言っていい太田海也選手は、3ヶ月ぶりに出場した競輪で目覚ましい活躍を見せました。
なるほど、4月末から5月初めの「スポーツ報知杯争奪戦(松山競輪一般)」において、3日間すべて1着の完全Vを達成したのは間違いありません。ですが、「オールスター競輪2023(西武園競輪G1)」という至高の舞台で、一次予選1本目Bを取って2着、一次予選2本目Bを取って1着、二次予選でBを取って1着と、すさまじい破壊力を見せつけることになろうとは。
準決勝こそ吉田拓矢選手にBを取られる形での4着となったものの、最終日の特別優秀競走では同県の大先輩である岩津裕介選手を引き連れ、Bを取っての逃げ切り1着。「いやはや、恐れ入りました」と頭を垂れるよりほかにありません。
さあ、今回も恐れ入ることになるかもしれません。まだまだ競輪の経験値は少ないですし、本人も自転車競技に大きな魅力を感じているものの、どちらでも活躍できる能力が現在進行形で成長中です。となれば、今回の寛仁親王牌でも、十分に台風の目となる可能性があります。もし順調に勝ち上がるようなら、中国地区や四国地区の選手にとっては、このうえない味方となるでしょう。
シリーズ展開予想③/嘉永泰斗が熊本競輪場の復活に華を添える!満足行く走りで故郷に吉報を持ち帰ることができるか
熊本競輪場が、ついに2024年度に復活することが発表されました。「3日間に2回の震度7」という珍しく、そして多くの悲劇を生んだ熊本地震から8年。周長500mのバンクも400mに短縮されるなど大きく改装され、生まれ変わっての再出発が予定されています。
そうした長い苦闘のさなか、熊本支部所属として、多くのニューヒーローたちが台頭してきました。特に、地元熊本の九州学院高校の出身で、同校の先輩にあたる瓜生崇智選手の活躍に触発されて競輪選手となった嘉永泰斗選手。そんな彼は、最近特に大きな成長を見せています。
最も注目に値するのは、「五稜郭杯争奪戦2023(函館競輪G3)」での活躍でしょう。函館競輪の開設を祝う記念競輪において、嘉永泰斗選手が見せたポテンシャルは歴史に残るものでした。
当サイトでも五稜郭杯争奪戦の特集記事を掲載し、嘉永泰斗選手も新田祐大選手や犬伏湧也選手と並ぶ注目株として取り上げておりました。
しかしながら、「S級決勝において、上がりタイムのバンクレコードを更新しての優勝」というド迫力のパフォーマンスを見せるところまでは、さすがに予期していませんでした。
さらに、この優勝は嘉永選手にとって別の意味をも持っていたのです。昨年開催の「五稜郭杯争奪戦2022(函館競輪G3)」を制したのは、同じ熊本の瓜生崇智選手。嘉永選手が競輪を始めたきっかけであり、今は熊本支部の先輩ともなった「九学の絆」が、翌年の函館でも見事に花咲きました。
先日、ラストとなる”間借り地元記念”となった「火の国杯争奪戦in久留米(久留米競輪G3)」では、地元の中本匠栄選手とV争い。結果は中本選手が優勝の栄誉を勝ち取り、頚椎骨折からの復活を経ての地元記念制覇という喜びを手にしました。同時に、その栄光へ到達できたのは、嘉永選手ら熊本勢の日々のトレーニングと本番での連係の賜物と言えるでしょう。
かくて迎える、寛仁親王牌です。「新生する熊本の象徴」として、嘉永泰斗選手の走りには楽しみが詰まっています。
弥彦競輪場のバンクの特徴
2023年の「寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」の舞台となるのは、新潟県にある弥彦競輪場。同G1競走について、ほぼ前橋と持ち回りで開催しているコースですが、前橋とはまた違った特徴を有している点に留意すべきでしょう。
- 弥彦バンクのみなし直線63.1mの織りなすドラマ!2021年開催の決勝でも「差し」が決まった
- 2023年の弥彦バンクは「逃げ」と「差し」の2極化傾向?数字から見る弥彦の今
前橋が「天候や気候の影響を受けにくいドーム内の335mバンク」であるならば、弥彦は「後ろからの差し込み注意な屋外400mバンク」と、大きく環境が異なります。当記事を含む当サイトの公開記事、あるいはおすすめする優良サイトの情報を集め、より良い車券戦略でもって臨みましょう。
特徴①/弥彦バンクのみなし直線63.1mの織りなすドラマ!2021年開催の決勝でも「差し」が決まった
周長400mにもかかわらず、みなし直線が63.1mもの長さを誇る弥彦バンク。この弥彦の特徴については、昨年の記念競輪である「ふるさとカップ2023(弥彦競輪G3)」の特集記事でもお伝えしました。
こちらで解説した内容は、2023年の寛仁親王牌でも十分に通用する要素が豊富に詰まっています。ぜひ合わせてご覧ください。
そして、上記でも触れた特徴は、まさに前回の弥彦親王牌、すなわち「寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント2023(弥彦競輪G1)」の決勝でも見られたのです。
番手まくりを繰り出した新田祐大選手に続くのは、埼玉の平原康多選手。タテヨコ自在の動きができる平原選手は、勝手知ったる”準地元”の長い直線を利し、親王牌優勝を勝ち取りました。
一方、敗れたのみならず、落車を誘発したとして失格判定となった新田祐大選手。その悔しさは翌年(2022年)の親王牌制覇によって晴らされ、見事なグランドスラム達成へつながったのも、また競輪の面白さと言えるでしょう。
ともあれ、どんなに力のある選手でも「差し」による強襲を防ぎ難いのが、この弥彦バンクの怖いところです。決勝はもとより、多くのレースで念頭に置きたいポイントと言えるでしょう。
特徴②/2023年の弥彦バンクは「逃げ」と「差し」の2極化傾向?数字から見る弥彦の今
弥彦バンクの決まり手については、2021年や2022年から若干の変化が見られます。すなわち、「弥彦では『差し』が強く、『逃げ』がまくりを凌ぐ」という傾向が強まっているのです。
決まり手 | 1着率 | 2着率 |
逃げ | 26% | 18% |
まくり | 24% | 11% |
差し | 50% | 29% |
マーク | – | 42% |
近年の弥彦での、1着決まり手および2着決まり手は上記の通り。1着に関しては、よくある割合の並びが「20:30:50」であることを考えれば、”逃げ切りの多さ”と”まくりの決まらなさ”がわかります。
2着決まり手もまた、同様の傾向を示しています。逃げ粘りや別線差しも多いですが、同ライン差し損ねのマークも多くなっていますね。一方、まくりは少なめです。
自力同士の決着もまるでないわけではないものの、やはり番手以降の選手の頑張りが光りやすいバンクと判断すべきでしょう。
寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント2023(弥彦競輪G1)のまとめ
「新時代の競輪に出会う」
このように締めくくられる、「寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント2023(弥彦競輪G1)」のPRキャッチコピー。それは決して大仰ではない表現だったと、選手もファンもすべてが終わったあとに、さらには数年後にも回想するかもしれません。
弥彦競輪場にて行われる、久々に入場制限のない寛仁親王牌です。自己管理に徹し、全力をもって応援することで、きっと誰にとっても永遠に残る「神話」へと昇華されることでしょう。
弥彦競輪場のアクセス
住所 | 新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦2621 |
電話番号 | 0256-94-2066 |
弥彦競輪場。この名前を聞いて、場所や由来にピンと思い当たるのは、日本神話ファンと競輪ファンくらいなものかもしれません。2023年10月現在で43箇所に競輪場が存在していますが、「日本唯一の村営の競輪場」です。
また、これは同時に中央競馬、地方競馬、ボートレース(競艇)といった他の公営競技を含めてのものでもあるため、「日本唯一の村営の公営競技場」という称号までついてきます。
弥彦競輪場のある弥彦村には、かの『万葉集』にも歌われる彌彦神社が存在。この彌彦神社は、なんと島根の出雲大社、大分の宇佐神宮と並んで、日本でも珍しい「二礼二拍手一礼を行わず、”二礼四拍手一礼”を行う神社」なのです。
数々の神話で彩られた出雲大社、全国4万の八幡宮の総本山である宇佐神宮と並んで「特殊な拝礼」がある彌彦神社には今なお多くのミステリーが存在しますが、それだけ豊かな風土とロマンにあふれた地であるとも言えるでしょう。
電車・無料送迎バスでのアクセス
先の項目に書いたとおり、村営の競輪場ということもあって、公共交通機関や無料送迎バスでのアクセスが手厚いわけではありません。それでも、十分にアクセスは可能なプランが組み立てられます。
弥彦競輪場の最寄り駅は、JR弥彦線「弥彦駅」です。ただ、同駅から本場までは徒歩15分ほどの距離があるため、タクシーの利用が推奨されるでしょう。次に近隣で利用しやすいのは、JR上越新幹線および弥彦線の接続駅である「燕三条駅」です。同駅は利用客数の多さもあり、タクシーも拾いやすい利点があります。
また、無料送迎バスも便数が少ないものの用意されているため、これを利用したアクセスも検討が可能です。上述の「弥彦駅」と「燕三条駅(東三条駅発)」に加え、JR越後線と弥彦線が接続する「吉田駅」から1日に1便または2便が運行しています。いずれにしても、事前の計画と確認は必須となるでしょう。
自動車でのアクセス
弥彦競輪場には、約2,000台ぶんが駐車可能な無料駐車場が用意されています。弥彦の記念競輪に加え、今年のように「寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」が開催される年はまさしく”祭り”ですから、盛大な受け入れ態勢でもって出迎えてくれるでしょう。
弥彦競輪場の最寄りインターチェンジは、北陸自動車道「三条燕IC」です。また、同じく北陸自動車道「巻潟東IC」もほぼ同距離となり、いずれのインターチェンジからも下りて約30分ほど走行することになります。越後のすばらしい自然を堪能するドライブを考えるにあたり、弥彦競輪場はうってつけの目的地です。