京都と並び、古代から日本の中心にあり続けた奈良。「万葉の歴史」を刻んできた地にある奈良競輪場もまた、同地域を経済的にも娯楽的にも支える一方で、時代の変化との苦闘を続けてきました。
しかし、奈良がなおその価値を損なわぬように、奈良競輪場もまたその個性を保ち、73周年記念競走を迎えることになります。
周長333mのショートバンク。コーナーを曲がればすぐにやってくる栄光のゴール。ゆえにこそ、その戦いはスピード決戦。一瞬の判断ミスが命取りとなる、この奈良バンクの記念競輪について、車券予想に役立つ情報とともにお届けします。
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- 近年の春日賞争覇戦は近畿の牙城!ただし、遠征勢も力でねじ伏せる競走あり
- 地元近畿勢が至強集結!遠征勢にはかなり厳しい展開になりそう
- 奈良バンクでは逃げが決まる……とは限らない!グレードレースゆえの怖さをデータで解説
目次
「春日賞争覇戦2024(奈良競輪G3)」の詳細情報
開催年 | 優勝選手 | 所属支部 |
---|---|---|
2019年 | 村上 博幸 | 京都 |
2020年 | 松谷 秀幸 | 神奈川 |
2021年 | 山田 久徳 | 京都 |
2022年 | 松浦 悠士 | 広島 |
2023年 | 三谷 竜生 | 奈良 |
「春日賞争覇戦」は、奈良競輪の開設を祝う記念競輪です。そして、近年は地元地区である近畿勢がタイトルを獲るケースが多いですね。完全に地元の奈良支部勢が、4日間開催になった直近20年で勝ったのは3回。2005年の大井啓世選手、および2018年と昨年2023年の三谷竜生選手です。
その他、「近畿勢といえば彼らでしょう」とばかりに、京都支部の村上義弘選手と村上博幸選手の兄弟も優勝経験あり。一方で、2014年の平原康多選手(埼玉)、2016年の浅井康太選手(三重)、2022年の松浦悠士選手(広島)など、自在に動いて戦えるS級S班の実力者が取っていくパターンも多い状況です。
今節のS級S班の参戦は3名。青森の新山響平選手、福井の脇本雄太選手、そして大阪の古性優作選手となります。こうした点を鑑みつつ、シリーズの展望をすることになるでしょう。ただ、まずは昨年の決勝。地元の三谷竜生選手の「復活走」とも言える6年ぶりの地元記念制覇について、以下の項目で振り返っていきます。
<前回決勝回顧>「春日賞争覇戦2023(奈良競輪G3)」は地元の三谷竜生が近畿カルテットの絆で復活V!
車番 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
1 | 三谷 竜生 | 奈良 |
2 | 佐藤 慎太郎 | 福島 |
3 | 柏野 智典 | 岡山 |
4 | 皿屋 豊 | 三重 |
5 | 新田 祐大 | 福島 |
6 | 栗山 俊介 | 奈良 |
7 | 山田 久徳 | 京都 |
8 | 阿部 拓真 | 宮城 |
9 | 中西 大 | 和歌山 |
2023年の春日賞争覇戦の決勝は3分戦。しかし、その主力は2つのラインに絞られていました。「中西-山田-三谷-柏野」の近畿4車、および「阿部-新田-佐藤」の北日本3車です。ゆえにこそ、「皿屋-柏野」の混成ラインは穴目ではあったものの、あくまで展開待ちだった感は否めません。
それでも、皿屋選手が前受けの北日本ラインに対してレースを動かしたあたりはさすがです。ただ、これは「お膳立て」の意味合いが強いものでした。北日本ラインが突っ張ったのを見て、近畿4車の先頭を任された中西選手は赤板周回前からカマシを打ち、打鐘が入る前から主導権を奪いにかかります。
勝負の加速とあって、ここで近畿4車目の栗山選手が脱落しました。とはいえ、ここは奈良です。打鐘を聞いた段階で前にいることは非常に有利であり、何より近畿も北日本も番手発進が有力な並びだったため、”中西大選手の意地”が残る近畿勢に好機の風をもたらしました。
後方から新田選手が切り替えてBを取りますが、ここで近畿の2車目の山田選手が発進します。そこから何よりも重要な地元の大本命、奈良の三谷竜生選手が3段目の発進をかけて勝負あり。最後は”衰え知らずの末脚”でもって、新田選手の後ろについていた佐藤選手が2着、さらに皿屋選手をかわす形で柏野選手が3着に入線しました。
1着から5着までが1-2-3-4-5と並ぶ、「ボートレースみたいだ」と思ってしまいそうな組み合わせでの決着。3つのラインからそれぞれ上位を獲る選手が出た結果、3連単1-2-3は18,400円の万車券配当へ発展。基本的には新田選手絡みが売れていたこともあり、3連複も5,810円と好配当でした。
銀輪ギャンブラー真里谷の各地区分析with展開予想&注目選手ピックアップ
地区 | S級S班 | S級1班 | S級2班 |
---|---|---|---|
北日本 | 1名 | 3名 | 9名 |
関東 | 0名 | 4名 | 14名 |
南関東 | 0名 | 4名 | 10名 |
中部 | 0名 | 3名 | 7名 |
近畿 | 2名 | 8名 | 10名 |
中国 | 0名 | 2名 | 6名 |
四国 | 0名 | 3名 | 6名 |
九州 | 0名 | 6名 | 10名 |
2024年の「春日賞争覇戦」における、各地区の級班別の人数内訳です。ただし、これは2024年2月19日時点の情報である点にご留意ください。
単純な戦力比較でいえば、やはり「近畿が圧倒的」でしょう。S級S班の古性優作選手と脇本雄太選手の黄金ペアが参戦。これだけでもう「どうやったら他地区は勝てるかねえ」という気持ちになろうものです。
対抗格としては、S級S班の新山響平選手を擁する北日本地区。S級1班には赤パン復帰を狙う守澤太志選手もいますが、現在の競走得点では近畿の南修二選手と南関東の松谷秀幸選手のほうが上ですね。しかし、後ほども解説するとおり、奈良での差しタイプはどうしても連下までとなるでしょうか。
現状の活躍度合いでいえば、九州の山田庸平選手が参戦を予定していたのですが、残念ながら病気欠場となってしまいました。「読売新聞社杯全日本選抜競輪2024(岐阜競輪G1)」のダメージが残っているのかもしれず、不安が募ります。
すると、「盤石の近畿勢」と「自力対抗可能な北日本勢」というのが、今節「春日賞争覇戦2024(奈良競輪G3)」のシリーズ展望として最適な考えになるでしょう。
この2地区以外にも中部の藤井侑吾選手(愛知)、中国の片岡迪之選手(岡山)、九州の佐藤幸治選手(長崎)なども前に踏めるタイプで好調なレーサーがいますが、いかんせん近畿があらゆる戦い方をできる選手をそろえてきており、勝ち上がりにつなげるのは至難の情勢です。
- 古性優作(大阪)
- 三谷竜生(奈良)
- 新山響平(青森)
そういうわけで、この3名。近畿の古性優作選手(大阪)、三谷竜生選手(奈良)。および北日本の新山響平選手(青森)というチョイスです。
本来なら脇本雄太選手(福井)も入れての”近畿染め”が良いのかもしれませんが、いかんせん近況の「喘息」、長らく抱える「股関節のコンディション不良」などが成績の渋さにも表れています。ならば、久々の優勝を目指す新山響平選手の期待値を取ろうじゃないか。そう考えた次第です。
注目選手①/古性優作(大阪)
地元の英雄を1番手に持ってくるべきなのでしょうが、今の”強さ”という点から見ると、古性優作選手を先に紹介しなければならない。そう感じてしまいます。どちらもKEIRINグランプリの優勝選手ですから、上下があるわけではないのですが。「至強」たる存在として今節も君臨してくれるでしょう。
前節「能登半島支援・読売新聞社杯全日本選抜競輪2024(岐阜競輪G1)」でも当然に優勝候補に挙げましたが、期待に違わぬ活躍でした。初日の特選予選は8着発進だったものの、二次予選と準決勝はきっちり連続1着。
ただ、迎えた決勝は「必ずや勝利を」と、気鋭の北井佑季選手、S級S班復帰を目指す郡司浩平選手、一撃の差し脚がある松谷秀幸選手……これら「神奈川支部トリオ」が唯一の3車ライン。これを打ち崩すのは容易ではなく、結果は郡司選手が猛追する清水裕友選手を振り切ってV。早くも2025年の”赤パン”奪還を果たしました。
3着が北井佑季選手でしたので、本線になりえるラインの「はさみ車券」が有効だったケースになりそうです。
神奈川3車が人気していたこともあり、3連単の配当も9-3-6で9,890円と、万車券には届きませんでした。古性選手や清水選手が迫っても2着3着までだろうという売れ方をしており、ファンの見立てがそのままハマった形です。
しかし、今節については「近畿が王となる勢力図」であることは、先の項目で述べたとおり。古性選手はその中心を担う1人となるでしょう。
注目選手②/三谷竜生(奈良)
「三谷竜生は、終わっていなかった」
そう述懐させるに十分な、昨年の「春日賞争覇戦2023(奈良競輪G3)」でした。それでも、「脇本雄太」「古性優作」という千両役者がいるなかで、当記事ではあえて三谷竜生選手、中西大選手、土生敦弘選手の3選手をピックアップ。結果的に、これは悪くない見立てとなりました。
とはいえ、「地元3割増し」を体現するような走りは、グランプリウィナーの面目躍如といったところでしょう。結果的に、2023年は4つもの開催で優勝を勝ち取り、2018年の”超”がつく活躍を思い出させるものとなりました。
ただし、近走は厳しい結果が続いています。年明け初戦だった「東日本発祥倉茂記念杯2024(大宮競輪G3)」の3日目、準決勝で落車棄権したのが響いているのでしょう。
2023年終盤も「朝日新聞社杯競輪祭2023(小倉競輪G1)」で落車失格。その後は「オランダ王国友好杯2023(別府競輪G3)」で決勝に残り、「NIPPO杯&CTC杯(松阪競輪F1)」では優勝していますから、ここでは影響を感じさせていません。
「KEIRINグランプリ2023(立川競輪GP)」のシリーズ戦として行われた、「寺内大吉記念杯(立川競輪F1)」でも決勝に進んでいるのですが……。
大宮記念で重ねて負ったダメージが大きいために、2節前の「スポーツニッポン杯(立川競輪F1)」でも決勝進出を逃す苦戦を喫したとなると、脇本雄太選手と同じくコンディション不良の可能性を考えなければなりません。本番で不調を吹き飛ばしてくれるかどうかの見極めが大切ですが、「車券予想」のうえではかなり頭を悩ませる存在になりますね。
注目選手③/新山響平(青森)
“近況が芳しくない”というカテゴリでいえば、青森の新山響平選手もパッと見でそう感じるかもしれません。最後に優勝したのは、初のS級S班を決めた「朝日新聞社杯競輪祭2022(小倉競輪G1)」です。以来、開催での優勝歴はありません。
ですが、優勝がすべてを物語るわけではないことは、同じS級S班の佐藤慎太郎選手の成績を見てもわかることです。常に質の高い競走を続けていれば、「獲得賞金」という形で表れてきます。そして、佐藤慎太郎選手と同様に、新山響平選手もまた2024年のS級S班の座を勝ち取りました。
2023年は優勝こそなかったものの、非常に多くの競走をこなし、1着数も24回を計上しました。これはG1を獲った2022年を超える働きです。そして、信頼される自力型選手の宿命として、「ここ一番ではラインのために自らを犠牲にする覚悟で戦う」ことも多く、結果的に優勝0回の数字が導かれただけとも表現できるでしょう。
ただ、「ちょっとした不安」があるのも事実です。2024年は開幕2節の成績が「0-4-0-4」。1着が一度もなく、二次予選と準決勝でそれぞれ2着を取るに留まりました。とはいえ、このうち3つはBを取る積極的な競走だったので、さすがに力があるところは見せています。
そもそもにして、G1競走である全日本選抜競輪の決勝に残っているわけですから、十分すごいことです。完走したことで、しっかり賞金も入ったでしょう。
そんな新山響平選手にとって、奈良競輪場への参戦は久々の出来事となりました。まさしく競輪祭を勝った年、「春日賞争覇戦2022(奈良競輪G3)」以来です。この時は初日特選9着から二次予選3着でどうにか通過も、準決勝9着で敗退。
しかし、その直前の正月開催「スピードチャンネル・スカパー杯(伊東競輪F1)」でBも取れずに準決勝5着敗退しているくらいですから、「まだまだ開花前だった」と判断することもできるでしょう。これでは同期の吉田拓矢選手に追いつけない、と考えられていた時期でもあります。
その吉田拓矢選手は2024年2月中旬現在、開催期間が重複する別の記念競輪、「能登半島支援・玉藻杯争覇戦2024(高松競輪G3)」に参戦中。一次予選1着、二次予選2着と勝ち上がりを続けています。新山選手としては、”大当たり世代”107期の最大のライバルに負けるわけにはいかないでしょう。
新山響平選手が再び栄光を勝ち取り、3月の「ウィナーズカップ2024(取手競輪G2)」へ向けて「勝利者」として乗り込む。そのためには、鉄板とも言えるほどの選手層で迎え撃つ近畿勢を撃破する必要があります。しかし、これぞ”赤パン”という競走によって、見事に成し遂げてほしいものです。
奈良競輪場のバンクの特徴/グレードレースでの傾向は一味違うので要注意
決まり手 | 1着率 | 2着率 |
---|---|---|
逃げ | 16.2% | 20.9% |
まくり | 43.6% | 19.6% |
差し | 40.7% | 20.9% |
マーク | – | 38.4% |
「奈良競輪場のアクセス」の項目でも触れますが、このバンクは全国でも代表的なショートバンクであり、「実力ある選手の逃げが日本一決まりやすい」と表現しても過言ではないくらい、前へ行ったラインがそのまま決まる特徴を持っています。
いや、持っているはずですし、数字もそれを示していました。物理的に考えても、そうなるのが自然です。何もおかしくはありません。
ところが、「過去10年のG3競走(S級9人制)における決まり手統計」をまとめたのが、上記の表です。奈良バンクは逃げ最強とは何だったのか。ハチャメチャに”まくり最強”です。しかも、ちゃんと”差し”も決まっています。
やはりトップ選手がそろうレベルのグレードレース、つまり今回のような記念競輪「春日賞争覇戦」や「施設整備等協賛競輪」などともなると、よほど力が抜けた選手か、ラインの番手が良い仕事をするなどのパターンに持ち込まないと、「G3奈良の逃げ切りは困難」と分析できるでしょう。
一方で、逃げの2着率が20.9%もあるので、先行ラインが有利なのもまた道理といえるでしょうか。逃げた選手が後ろの番手選手に差されて2着の展開はもとより、まくってきたラインの先頭選手だけにかわされ、逃げ選手が粘り込んでの2着パターンも存在することがわかります。
こうしたデータで見ると、「奈良だから逃げが絶対的に強い!」というのは危険な思い込みである一方で、「2車単や3連単といった単系での狙いを絞るヒント」が隠されている感もありますね。
「春日賞争覇戦2024(奈良競輪G3)」まとめ
すでに、全日本選抜競輪や玉藻杯争覇戦に付記したように、2024年1月1日に起きた天災である「能登半島地震」の被災者および被災地を救う試みが、競輪界全体で始まっています。グレードレースを中心として「令和6年能登半島地震復興支援競輪」の副題が冠され、収益の一部が復興支援として寄付される運びです。
2月最初のグレードレースだった「たちあおい賞争奪戦2024(静岡競輪G3)」から始まり、少なくとも7月末までの半年間は実施する旨が発表されており、この静岡記念と岐阜全日本選抜だけで数千万円の寄付金が計上できる予測が立てられていました。よって、玉藻杯争覇戦と春日賞争覇戦も加えれば、1ヶ月で1億円に到達するでしょう。
競輪はギャンブルですが、公営競技です。その走りは選手たち自らの栄誉と誇りのためである一方、誰かを精神的にも金銭的にも救うものとなります。翻って考えてみれば、ファンが車券を買うということは、それ自体が公共への投資に還流していきます。こうした事実について、今回の復興支援競輪、ならびに3月にも予定されている「大阪・関西万博協賛競輪」は明確に教えてくれるでしょう。
KEIRINグランプリウィナーが複数集まった、今回の奈良73周年記念競輪「春日賞争覇戦」。それぞれのレースが熱ければ熱いほど、ポジティブな感情と行動が力強く広がっていくことになるのです。まさしく、この競走の名のとおり、「春日」が昇る時がやってきます。
奈良競輪場のアクセス
1950年5月18日、「奈良競輪場」は奈良県奈良市に開設しました。多くの公営競技がそうであるように、その使命は戦災からの復興、地域経済の活性化、一般市民の娯楽、新たな雇用の創出でした。それが今や「世界のケイリン」になっていることは、歴史の数奇とさえ言える事象です。
奈良競輪場のバンクは、とりわけ「積極性」を鍛えるバンクといえるかもしれません。東の松戸競輪場と同じくショートバンクの代表格で、「周長333m」「みなし直線38.0m」という現代の自転車競技に近い「一瞬で勝負が決まる設計」になっています。
実際にレースをご覧いただければ、「コーナーが来た。あ、もうゴールが来た!」と驚くこと間違いなしの速攻感。ゆえに、どのクラスでも周回を多めに走ることになるわけですが、コーナリングと仕掛けどころが上手い選手でないと、この奈良で勝ちきるのは困難でしょう。車券予想についても、優良おすすめサイトなどの賢者の知恵を借りながら、十分に思案していくことが大切です。
住所 | 奈良県奈良市秋篠町98 |
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電話番号 | 0742-45-4481 |
最寄り駅 | 近畿鉄道「大和西大寺駅」 ※無料送迎バス 約5分 近畿鉄道「平城駅」 ※徒歩約7分 |
最寄りIC | 第二阪奈道路「宝来IC」 ※約15分 |
無料駐車場 | 有(1,360台) |
公式サイト | 奈良競輪場 |